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あなただけに・・・温情経営が招く悲劇

「あなただけに」という言葉ほど危険なものはないと思っています。

職場で、
「あなただけに話すけど〇〇さんと△△さんは付き合っているらしいよ」
こんな話をしたならば一週間もしないうちに全員が知っていることとなります。
もし、こんな話を私にされたら黙っている自信がまったくありません。

ある時、経営者の方からこんな相談をされたことがあります。

「親の代からの金庫番(経理担当者)がこの度退職することとなった。業界が不況の時にも金策に走ってくれた。功労者なんだ。だから『あなただけに』と言って退職金を渡すことを話し、そのことは黙っているように言ったんだが、本人よほどうれしかったんだろう・・・みんなに『俺だけにって、社長が・・・』と話してしまったんだ。そうしたら何人かの従業員が『退職するときは私にも退職金出るんですよね?』と言い出して・・・」

しかも、この金庫番さん、3年前にあまり良い辞め方をしていない元従業員にも話してしまったらしく。退職金債権の時効は5年・・・。

退職金を支払う以上は退職金規程を作り、普遍的な基準を設けるのが一般的です。
もし、従業員・元従業員がこのままの状態で労働監督基準署に駆け込んだら、ややこしいことになるとこの経営者も気づいての相談でした。

従業員間の退職金支払いを不当に差別的にしてはいけない・・・逆に言うとこの金庫番さんだけ「差別的立場」にしてしまえば良いのではないか、と。
従業員退職金ではなく、“役員退職金”にしてしまえば良いのでは?と思ったのですね。

株主総会を経ず、取締役会だけで任命できる「役員」になってもらったというわけです()。

従業員に「お支払い」するにも注意が必要ということですね。

執行役員という立場は非常に微妙ですので、規程等は社労士に相談し、当該退職金の損金性については税理士にも相談しました。

※2024年5月時点の内容となります

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