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会社のへそくり

世の中、たんす預金が多いと聞きますが「わからないでもないな」と思うのです。

下手に預金をしたり、金融商品に手を出したりすると自宅に書類が届いて「コイツ何かやっていやがるな」という疑念を家族から持たれ、結局自由な金にならないというオチになります。
「それくらいならどこかに隠しておこう」と思っても不思議ではありません。
普通預金に預けたところで増えないんですから・・・

先日「おっ!」と思うことがありました。それは十数年前に購入した中古マンションの現在価格を調べたところ購入当時よりも価格が上がっていたのでした。
「これはなかなか良いへそくり手段かもしれない」なんて思ったのですね。
ただ、売った時にはやはりバレますし、逆に振れる(思ったより価格が落ちる)ことも想定されるのです。リスクが高すぎます。

個人のことでなく、これが会社となるとどうか?というと貸借対照表に現れない世界で・・・ということになるのだと思います。
ご存じの通り、単年度の最終利益は貸借対照表の自己資本(純資産)に繰り入れられます。
もちろん、それが会社の体力を示す一指標となるわけですから良いのですが、例えば金融機関等に財務諸表の開示を求められた瞬間に全てが明らかになります。

貸借対照表に現れない資産(以下「簿外資産」と言います)を作るには単年度の利益を貸借対照表に繰り入れる前、つまりは損益計算書の中で処理するしかありません。

このことを長い間利用してきたのが生命保険業界で経営者の「税金を支払いたくない」という心理を利用(悪用?)して「節税」であるとか「税効果も加味した返戻率(実質返戻率)」などと言って積立型の生命保険を販売してきたのですが、彼らの言う「バレンタインショック」と呼ばれる2019年の税制改正によりその効果がかなり薄れた結果、その売り方しかできなかった何人もの募集人が業界から姿を消しました。業界としては「健全な姿」だと思います。

生命保険での効果が薄れた結果、簿外資産を貯める手立てがまったく無くなったか?というとそのようなことはなくて、国の中小企業政策の実施機関である中小機構の「経営セーフティ共済(倒産防止共済)」がそれに当たります。

詳しくは中小機構のホームページをご覧頂きたいのですが、
・取引先が倒産した場合、累計掛け金の10倍まで無担保・無保証人で融資が受けられる。
・掛け金は全額損金にでき、累計800万円まで掛けることができる。
・中途解約も可能で一定期間以上掛けていれば解約返戻金は元本保証される。
といったような内容です。

「ちょっといいクラブ買いたいな」と個人がへそくりを貯めるのと違い、なぜ会社がへそくり(簿外資産)を作るか?というと“損害保険等でリスクヘッジできない有事”の時のセーフガードのため=会社の体力を極力落とさないためですから、融資にしても簿外資産作りにしても経営セーフティー共済はまさにピッタリの手段だと思います。

民間の金融商品でも「全額損金で落とせて、解約するとそこそこ返ってくる」のようなものはないわけではありません。ただ、これらはほとんどが「短期間のうちに次の手当をしないとどんどん目減りする」ということなのですが、経営セーフティー共済の場合は「塩漬けにできる=長期に亘りそのまま安定的に置いておける」ことも大きなメリットであると思います。

先ほどバレンタインショックの話をしました。
生命保険業界にとってはそれはそれはショックだったのでしょうが、かなり条件は限られるものの同じ法人税基本通達の改正に「塩漬けできる」ようにしてあげているという事実もあります。国税庁も保険業界にとって「鬼」ではなかったということでしょう。いえ、業界というよりは一般法人にとってのセーフガード手段としては「有効」との判断だったのではないかな?と勝手に思っています。

経営セーフティーガードでの簿外資産=最大800万円を活用した上で「足りない」となったならば生命保険を含む民間の金融商品の利用を検討するのも良いかな、と思います。

以 上

※2024年6月時点の内容となります

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